プロが考える「良い野球場」は、必ずしも「観客からウケる野球場」とは限らない

 

 

 

需要側と供給側の違い

 

 

 

ブオン ジョルノ。マーシーです。

そういえば、「女性の”かわいい”」と「男性の”かわいい”」も違いますね。

 

 

■ざっくり言うと・・・

① プロが考える良い野球場

② 観客からウケる野球場

③ 目的は一緒ですが、意識は真反対

 

 

◯プロが考える良い野球場

甲子園球場を管理している「阪神園芸」は、良い野球場の条件を3つ挙げています。

 

・水はけが良い

グラウンドがぬかるんだり水溜りが出来てしまうと、選手は満足なプレーが出来なくなります。特に、全力疾走やフルスイングといった”全力プレー”にはグラウンドコンディションの良さが絶対条件となるので、雨天試合だったり、雨天の翌日に試合だった場合には、”水はけの良さ”が重要となるのです。

また、午前中雨で午後から試合だと、水はけがよくない場合はスケジュール通りに日程をこなせなくなる可能性があります。これは選手のモチベーションを下げますし、プロであれば観客動員にも影響します。

グラウンド整備において、「雨との付き合い方」は非常に重要です。

 

 

 

・吸水性が良い

”水はけ”と同一視されがちですが、少し意味が違います。吸水性とは、水を含む能力のことで、吸水性が良くないと、水を撒いた時に水たまりになってしまいます。野球の試合では、選手がスライディングをしたり、ダイビングキャッチをしたりするので、怪我をしないために、土をある程度湿らせて柔らかくしておかなければいけません。よく高校野球の甲子園中継で、試合と試合の間に整備員がホースで水を撒いているのはそのためです。

 

 

 

・イレギュラーバウンドが少ない

グラウンドの土が盛り上がっていたり、凹んでいたりするとイレギュラーバウンドが発生する可能性があり、得点・失点に絡むケースも稀にありますから、イレギュラーバウンドは極力少ないほうが良いでしょう。

 

 

とはいえ、ある程度選手がプレーしていると、スパイクシューズでこういった状態になりますので、イレギュラーバウンドを確実に無くすことは不可能と考えて良いでしょう。

 

 

◯観客からウケる野球場

さて、次は”観客からウケる野球場の条件”ですが、これは”プロが考える良い野球場の条件”と驚くほど相反します。1個ずつ見ていきましょう。

 

・水はけが悪い

水はけが悪いと、雨の日の試合は球場の土がドロドロになります。そんなドロドロの状態で、観客は一体何を求めるのでしょうか。それは、”選手が泥だらけになりながら必死にプレーする姿”です。特に高校野球では、選手にそうした姿を求める観客が大勢います。

プロでも、2017年セ・リーグのクライマックスシリーズ(DeNA☓阪神@阪神甲子園球場)で降雨試合が開催された際に、良くも悪くも一番盛り上がりました。

 

 

「こんな天候で試合をさせられて、選手がかわいそう」という意見が出る一方、写真の梅野選手のような全力プレーを見て感動したり盛り上がる観客も少なからずいました。ドロドロの球場には、こうした”全力プレー”に感動的なエッセンスを加える効果があります。

 

 

・イレギュラーバウンドが多い

プロの球場整備員からすると、”イレギュラーバウンドの起きやすい球場”は、自身の整備スキルに直結した結果であり、決して気持の良いものではありません。一方で、イレギュラーバウンドは守備に2つの「面白味」を加えてくれます。

1つ目の面白味は、「ファインプレー」が生まれる点です。

例えば、普通のゴロは練習を積んだ選手であれば難なく処理できますが、これがイレギュラーバウンドすると、途端に処理の難しい打球へと変貌します。そういった打球を選手が反射神経・身体能力・咄嗟の判断力を駆使して上手いこと処理する姿は、「これぞプロ野球!」と、称賛したくなるほどエキサイティングです。

2つ目は「エラー」です。

イレギュラーバウンドは処理の難しい打球なので、エラーの発生率も高まります。時に失点に繋がることもあるので、選手からすると「エラーだけはしたくない」という人が大多数でしょう。しかし一方で、エラーは観客が最も盛り上がるプレーの1つでもあります。選手がエラーをして、観客がヤジや励ましの声援を送る姿は、野球観戦の醍醐味ですからね。選手はかわいそうですが。

 

 

◯目的は一緒ですが、意識は真反対

このように、素人とプロの整備員は、それぞれ真反対の意識から、”選手の最大限のプレー”を引き出して欲しいと考えています。ざっとまとめると、以下のような感じになります。

 

プロ→水溜りやイレギュラーバウンドを減らすことで、選手の能力を最大限引き出したい

観客→水溜りやイレギュラーバウンドが起きる中で、選手が持っている力を最大限駆使して活躍する姿が面白い

 

目的は一緒なのに、そこに行き着くまでの意識が真反対というのが興味深いですね。

 

 

 

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